2010年03月17日

介護にまつわるニオイケア

気になるニオイ
介護にまつわるニオイケア

へるすあっぷ21 2009年2月号より

 
 
Q 年をとると、体臭が強くなるような気がします。さらに介護が必要になると、さまざまな「ニオイ」が悩みの種になるようです。効果的な対策を教えてください。


A 介護にまつわるニオイは予防可能です。お茶がらやお酢なども活用します。

 
 
人はとしをとるにつれ、体から出る体臭も強くなります。唾液が出にくくなれば口臭が強くなり、皮脂の酸化は加齢臭となり、膀胱や腸の機能の低下は失禁のニオイとなります。ですから、介護の現場はニオイにまつわる悩みも多いのです。
いやなニオイは介護する側が不快なだけでなく、介護されるお年寄りにとっても心の負担になります。ただでさえ、「身の回りの世話をさせて申し訳ない」と思っているのに、さらに自分の体臭や排泄物のニオイで迷惑をかけているという気兼ねが重なります。
 
これまで、介護現場では「介護にニオイはつきもの」と諦めたり、遠慮して口に出さないことが多かったようです。しかし、老化を防ぐことはできませんが、介護臭は予防可能です。たとえば、飲み残したお茶がらからエキス(カテキン)を抽出して、お年寄りの清拭に使用すると体臭は著しく軽減します。尿失禁時のアンモニア臭はアルカリ性ですから、酸性のお酢や木酢液を使うとよいでしょう。
 
髪のニオイは、シャンプーに椿油を入れるとフケも予防できて効果的です。お年寄りの口臭予防は、唾液を分泌させる「口の体操」(本誌12月号で紹介)が誤嚥性肺炎の予防ともなり一石二鳥です。加齢臭の原因となる脂肪酸は酸性ですので、お風呂に重曹を入れて入浴するとよいでしょう。重曹風呂は体が芯まで温まり、健康増進にもなります。
 
市販の介護用品を活用することも大切です。今は各メーカーが消臭機能性を備えたおむつやポータブルトイレを開発しています。消臭繊維を使用した衣類や寝具もあります。これらの商品の知識はケアマネージャーに相談するとよいでしょう。常時寝たきりのお年寄りの寝室は、安全で殺菌作用や防カビ効果のある「弱酸性次亜塩素酸水」で消毒すると除菌消臭されます。これらのニオイケアをしたうえで、ティートリーやラベンダーなどの殺菌作用をもつハーブの製油を清拭や足浴などに利用すると、楽しく「香りケア」ができるでしょう。
 
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2010年02月14日

スタッフ自身のニオイケア 3

スタッフ自身が出すニオイ対策

 

入所者や施設環境のニオイケアばかり行って、スタッフ自身がニオイを出しているのでは本末転倒である。介護する側もニオイ対策をする必要がある。
体から出る臭いは発生器官別に、アポクリン腺からのニオイ、エクリン腺からのニオイ、皮脂腺からのニオイに分類できる。

 
 
1)アポクリン腺からのニオイ


アポクリン腺からは腋臭、俗称でワキガ臭と呼ばれるニオイが出る。
アポクリン腺の量は、遺伝形質によって決まり、人によっても人種によっても異なる。耳垢が溶けたキャラメル状に湿っている場合には、ワキガの可能性が高い。
しかし、腋臭はすべての体のニオイの中で最も治しやすい体臭である。強度の腋臭でも、手術によって完治するからである。
また、現在はさまざまな市販のデオドラント剤が開発されている。ただし、デオドラント剤の使い方には注意が必要である。耳垢の乾燥している非ワキガの人が、塩化ベンザルコニウムなどの強い殺菌剤が入った消臭剤で消臭すると、常在菌が死滅してより強いニオイになることもある。

 
 
2)エクリン腺からのニオイ


エクリン腺からのノイは、通常の汗のニオイである。
本来、汗はかいた直後は無臭である。そのまま放置すると、皮膚面で雑菌が繁殖して「汗臭く」なる。したがって、汗のニオイ対策は、汗をかいたらこまめに拭くことである。ニオイ成分は水に溶けやすいので、湿ったタオルで拭くとよい。より効果的には、緑茶をボール半分ほど作り、ミョウバンを溶かし、レモン1個を絞って冷蔵庫に保管しておき、夏場に汗をかいたらこれをタオルに湿らせて汗を拭くとよい。汗の成分のうち酸性の成分が多い場合には、ミョウバンの代わりに重曹を溶かしてもよい。

 
 
3)皮脂腺からのニオイ


皮脂腺からのニオイの代表は「加齢臭」である。中高年になると、皮脂腺に9ヘキサデセン酸などの皮脂がたまる。これらの皮脂が活性酸素や過酸化脂質で酸化されてできるノネナールという脂肪酸が、加齢臭のもとである。もちろん女性でも発生する。


ノネナールそのものは、年齢と共に発生する一種の加齢現象であるが、加齢臭が30代から発生したり、急に強くなったりした場合には、生活習慣病との関連が疑われる。加齢臭の発生過程は、中高年になり、血液の中に中性脂肪やコレステロールが増加し、活性酸素や過酸化脂質で酸化され、悪玉コレステロールがたまり、動脈硬化、高血圧、心筋梗塞と進む生活習慣病と同じである。つまり、加齢臭は「メタボ臭」という側面がある。体のニオイは、身体の中の健康度のバロメーターともなり、急に体臭が強くなったときは病気のサインでもあることに注意すべきである。


予防法は、当然、生活習慣病の予防と同じである。介護している高齢者が急に体臭が強くなった場合も、糖尿病などの疾患が悪化していることがあるので、スタッフは心配りだけでなく「鼻配り」も大切である。高齢者に対する「嗅診」は誰でもできるからである。

 
 
ニオイケアを自信につなげる


スタッフ自身のニオイケアで最も大切な点は、ニオイ対策をすることで自信を持って仕事に励むことができることである。介護の仕事は、高齢者の移乗、移動、排泄、入浴などの介助で体を接することが多く、スタッフ自身がニオイで悩んでいる場合には、前向きで積極的に仕事に打ち込めないこともある。
特に、腋臭で悩んでいる人はこの傾向が強い。前述のように、腋臭は完治する。一人で悩まず、専門医に相談するのもよいだろう。

 


ニオイケアは心のケア


以上、4回にわたって、介護施設におけるニオイケアについて説明した。読者の中には、「ニオイケア」という言葉を初めて耳にした人も多いだろう。
介護施設において、ニオイ対策は大きな問題であるにもかかわらず、ニオイの問題は「仕方ないこと」と半ばあきらめてしまっている施設も少なくない。しかし、ニオイは、入所者のみならずスタッフにも心理的負担を与え、時には離職の要因ともなる。本連載の機械に、各施設でニオイケアの意味が見直されるなら幸いである。

最後に、ニオイケアは心のケアでもあることを強調して、本連載を終了したい。
 
 
 

介護施設におけるニオイケア 4
スタッフ自身のニオイケア
臨床老年介護2008年11・12月号

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2010年02月07日

スタッフ自身のニオイケア 2

3)さまざまな消毒法
直接ニオイの付着とは関係ないが、施設や病棟内の雑菌やカビが看護者に付着することで、間接的にニオイが強くなることがある。
対策は正しい消毒である。施設のスタッフが効果的な消毒の知識を身につけることは、ニオイ対策の一つでもある。
まず、これは、手洗いでも床洗いでも同じである。特に、流れる水で洗うと、細菌のほとんど(90%以上)は除去される。その上で適時、必要最小限の殺菌剤による消毒を行う。
 消毒には、「理学的方法」と「化学的方法」がある。
 

(1)理学的方法
理学的方法は、熱や紫外線による消毒である。細菌は、80度以上の水蒸気で10分、沸騰したお湯ではたった2分で死滅する。入所者の身の回りの小物や衣類など、熱に耐えるものは煮沸消毒が有効である。布団などのいわゆる「日光消毒」は、太陽の紫外線による消毒というより、赤外線によって細菌やカビの水分を奪って死滅させる作用がメインである。


(2)化学的方法
化学的方法とは、消毒薬を使用する方法である。消毒薬は、いくつかの主要なものを使い分けるとよい。

 

@アルコール消毒
エタノールやイソプロピルアルコールが細菌の菌体のタンパク質を凝固することで殺菌する。デオドラント剤にもよく含まれている。車いすのハンドリムなどの消毒には有効である。

しかし、濃度が低下すると殺菌力が落ちるので、水拭き、水洗いとの併用は避ける。


A逆性石けん
「陽イオン界面活性剤」とも「塩化ベンザルコニオウム」とも言われる消毒剤である。これも、よくデオドラント剤に含まれている。陽イオンが細菌の細胞膜の酵素を変性させることで殺菌する。ベッド本体や手すりなどの金属部分の消毒に適している。
水拭き、水洗いとの併用は問題ないが、陰イオンの石けんとの併用は避ける。ウイルスや芽胞には無効である。


B両面界面活性剤
陽イオンと陰イオンとの両方を持ち、広いPHの範囲で使用でき、洗浄効果も併せ持っている。
逆性石けんと同じ使用法に適するが、これもウイルスや芽胞には無効である。

 

C塩素系(ハロゲン系)
化学名で「次亜塩素酸ナトリウム」と言う。次亜塩素酸を遊離して殺菌し、ウイルスや芽胞にも有効である。
脱臭作用もあるが、酸性の条件で有毒の塩素ガスが発生するので、注意が必要である。また、皮膚に対しても刺激があるので、一般病棟での消毒には不向きである。
しかし、現在はPHををコントロールして、次亜塩素酸の殺菌効果が最も高いPH領域に調節した「弱酸性次亜塩素酸水」が開発されている。人体に対する負荷が非常に少なく、噴霧も可能なので、施設内や病院内の幅広い用途に使用可能である。

 

D有機系防カビ剤
通常の殺菌剤が微生物の細胞を一挙に破壊するのに対し、有機系防カビ剤は細胞壁の一部のみ破壊し、菌類を衰弱死させる。破壊を受けた菌類は、周囲の同菌類に対して危険情報を伝達し、「忌避効果」となり、同菌類の発生を継続的に抑制する。有機系であるので安全性も高く、少量使用で長期間防カビ効果が期待できるため、施設や病棟での使用に適する。

 
 


以上のいくつかを適宜使用することで、入所者およびスタッフ双方の健康を考慮したニオイケアが可能となる。
ただし注意しなければならない点は、過度の無菌志向、清潔志向、無臭志向に走らないことである。人体には表皮ブドウ球菌という常在菌が生息してバリアーとなっているように、施設の生活環境も一般生菌が生息しているのが当たり前なのである。施設を行き過ぎた無菌環境にすることで、逆に入所者やスタッフ自身の抵抗力を落として、より強い細菌が繁殖し、より強いニオイを発生させるといった悪循環に陥らないようにするべきであろう。

 
 
 

介護施設におけるニオイケア 4
スタッフ自身のニオイケア
臨床老年介護2008年11・12月号

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2010年02月04日

居室・トイレのニオイケア 4

ポータブルトイレのニオイケア
ポータブルトイレのニオイケアは日進月歩と言ってよい。各メーカーが、消臭機能を付加したポータブルトイレや便器専用の消臭剤を開発している。ポータブルトイレは、使いやすさと同時に消臭機能の情報も、利用者に教えてあげることが必要である。
通常のポータブルトイレでも、工夫によってニオイを弱くすることは可能である。まず当然のことであるが、こまめに後始末することである。便と尿が一緒になって2時間から3時間ほどすると、アンモニアが発生してくるからである。
通常のポータブルトイレに水を張っておくだけでも、ニオイは減少する。自然の豊かな地方で焼却設備のある施設なら、近くに茂っている松やヨモギの葉を便器の底に敷くと、便のニオイを吸い取ってくれる。高齢者にとっても、大自然の中で放尿した昔の想い出がよみがえり、排尿排便の快感が得られるので、一石二鳥である。
また、お茶に含まれるカテキンは強力な消臭作用があるので、出がらしのお茶殻を敷くと、より効果的である。コーヒーが好きな高齢者には、抽出した後のコーヒーを敷いてあげると排泄が楽しみとなるだろう。
高齢者の理解が得られるなら、尿と便を分ける工夫もニオイ対策となる。便と尿が混ざると、発酵が進みアンモニア臭が強くなるので、便専用のポータブルトイレを用意し、尿は採尿器にするとよい。部屋にスペースがある場合には、便用と尿用の2つのポータブルトイレを用意して、尿と便が混ざらないように使い分けるのも効果的である。
ただし、尿と便を一緒にする習慣のある高齢者には、この方法を無理強いしてはならない。
排泄行為は生活行動の一つであり、快適に排泄できるニオイケアは生活支援としても大切である。
 
 

介護施設におけるニオイケア 3
居室・トイレのニオイケア
臨床老年介護2008年9・10月号


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2010年01月29日

スタッフ自身のニオイケア 1

スタッフ自身のニオイケアには、3つの目的がある。第一は施設環境のニオイがスタッフ自身に付着することを防ぐこと、第二はスタッフ自身が出す体のニオイが高齢者や同僚のスタッフを不快にしないこと、第三はスタッフ自身がニオイケアをすることで、自信を持って働けるようになることである。


ニオイの付着を防ぐ

施設環境のニオイがスタッフへ付着するのを防止する上で最も大切なことは、当然ながら施設環境のニオイを改善することである。環境のニオイ濃度が減少すると、必然的にスタッフに付着するニオイも少なくなる。この点は、本連載第2回の「入所者へのニオイケア」(本紙Vol.15, No.4)、第3回の「居室・トイレのニオイケア」(本紙Vol.15, No.5)を参考にしてほしい。


1)髪のニオイケア

ニオイの問題は、若いスタッフが多い施設では、非常に大切である。ある若いスタッフが「高齢者のケアは好きなのですが、高齢者の失禁のニオイが髪につくのが嫌で…」という理由で介護の仕事を辞めたケースがある。デオドラントの時代の介護では、ニオイ環境の改善が介護スタッフの確保の意味からも重要となる。


身体の中で、周囲のニオイが最も付着しやすい部位は髪であり、特に長髪の女性スタッフは注意が必要である。最も効果的な予防法は、帽子をかぶることである。
それでも髪にニオイが付着しやすいのはあ、髪のキューティクルが痛んでいる場合である。髪は、本来ガラスのように硬い素材でできているため、ニオイの分子は付着しにくい。たとえ付着しても、ブラッシングのみでニオイ分子を除去できる。江戸時代の日本髪の女性は、ほとんど洗わずにくしでとかすだけで生活していたのである。


一方、現在の若い女性は、毎日1回、時には一日に2回も髪を洗うことがある。しかも、合成化学洗剤で洗う。洗った後は、必ず高熱のドライヤーで乾燥させる。これらが、髪のキューティクルを痛める原因となる。髪の傷み部分や枝分かれ部分にニオイが付着すると、ブラッシングのみでは除去できない。
しかも、朝シャンプーをする人は、髪が完全に乾燥しないまま職場での仕事が始まる。ニオイ分子は水溶性であるので、半乾きの髪は外気のニオイ分子を吸収する。

ニオイを気にする人は、ニオイをなくそうとして髪をゴシゴシと強く洗い、さらに髪が傷つきニオイが強くなるといった悪循環に陥る。


髪のニオイ対策のポイントは、髪自身が持つ自浄作用を信じて、髪を洗い過ぎないことである。それでも気になる場合には、硬度の高いミネラルウォーターにミョウバンを溶かし、寝る前に髪にスプレーすることも有効である。


2)衣類のニオイケア

人間は毛のない猿であるので、衣類を着る。衣類は、身体にニオイが付着することを防ぐ役割もある。より効果的に防ごうとするなら、外気に接触する部分の素材は、ニオイ分子が付着しにくい化学繊維のものを着用する。ただし、化学繊維は汗の蒸発を阻害するので、通気性を考慮した機能性繊維のものを選び、さらに綿製の下着を併用するとよい。


最近は、衣類にスプレーするタイプの「経衣類消臭剤」が開発されている。これらの消臭剤は、衣類にスプレーして自分の体臭が他人に伝わらないことが本来の目的であるが、スタッフのユニホームの外側に塗布すると、外気のニオイが衣類を通って身体に付着することを予防できる。


さらに、出勤前に除菌消臭効果の高いペパーミント、ユーカリ、ティートリー、レモングラスなどのアロマローションを、衣類で覆われていない首筋や腕などに軽く振り掛けるのも良い。アロマの精油は、マスキング効果で肌に付着した外気のニオイを中和消臭する。また、その日の気分によって香りを変えたり、自分の好みの香りを作ることで、介護の仕事を楽しくできる。私が運営していたデイサービスの標語の一つは、「楽しくなければ介護じゃない」である。ニオイケアは、楽しい介護にも通ずるのである。
 
 
 
介護施設におけるニオイケア 4

スタッフ自身のニオイケア
臨床老年介護2008年11・12月号

 
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2010年01月24日

居室・トイレのニオイケア 3

トイレのニオイケア

1)トイレのニオイの原因

トイレのニオイの原因は、当然ながら排泄物のニオイが主である。

しかも、便器のニオイだけでなく、周辺の壁や床の汚れのニオイが加味されている。男性高齢者は、洋式便器に立ったままの姿勢で排尿することを好むので、はねた尿が壁や床に染みてニオイを発するようになる。特に、高齢者は前立腺が肥大して上手に排尿できないため、尿が飛び散りやすい。
便座カバーや床マット、スリッパも、ニオイを吸着する。

 

2)消臭対策

トイレのニオイは、アルカリ性のアンモニア臭が主であるので、酸性の強い木酢液を使用すると、ニオイ対策に有効である。木酢液を20倍くらいに薄めて、壁や床に霧吹きで吹いてから乾拭きする。木酢液事態のニオイが気になるなら、殺菌効果のあるティートリーなどのハーブの精油とブレンドするとよい。

市販されているトイレ専用の消臭剤の使用も有効だが、強い香りによるマスキング効果でニオイを消すタイプのものは、高齢者にとって消臭剤の香りそのものになじめない場合がある。リラックスできないトイレは便秘につながることもあるので、注意が必要である。そのような場合には、香りの薄い消臭剤にハーブを乾燥させたポプリハーブソルトを併用すると、自然で優しい香りを漂わせることができる。


3)環境の整備


施設や家庭を問わず最も大切なことは、トイレを使いやすい環境にすることである。トイレが遠い、夜一人では恐ろしい、寒いなどの理由で高齢者がトイレから遠ざかると、失禁が増え、自立も遠ざかる。できる限り自分でトイレに行ける環境を整えて失禁を防ぐことが、トイレのニオイケアにもなる。
例えば、トイレに行く意識を高めるために、次のような工夫をするとよい。

・寝る部屋をトイレに近い所に変える

・トイレまでの動線に沿って手すりを付ける

・明かりのスイッチを分かりやすいところに設置する

・トイレのドアは引き戸にする

・寝床からすぐ取れる所につえを置く など


夜中にトイレに行くことを避けるために、寝る前に水分を取らない高齢者がいる。しかし、夜中には大量の寝汗をかき脱水になりやすく、脳梗塞などになる危険が高いので、水分を十分に補給してから就寝するように指導することが大切である。

また、立った姿勢で排尿をする習慣のある男性高齢者も多い。そのため、排尿時の足の位置をトイレに近い床にテープで表示するのも有効である。ある施設では、スタッフが「手を添えて的を外すな水鉄砲」という川柳をトイレの壁に貼り付けたところ、トイレの汚れが少なくなったという例もある。
認知症高齢者の尿失禁の予防には、トイレに定期的に通う習慣を付けることが大切である。食事の前後にトイレに誘う、あるいは時間を見て早めにトイレに誘導するなどして、排尿行為に対する意識を高める必要がある。また、尿意を言葉で言えない場合には、そわそわする、ズボンをさする、落ち着きがなくなるなどの高齢者独自のサインがあるので、これらを見逃さないことも大切である。

このように、トイレの上手なケアは、高齢者の自立支援ともなる。

介護施設におけるニオイケア 3
居室・トイレのニオイケア
臨床老年介護2008年9・10月号

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2010年01月17日

居室・トイレのニオイケア 2

居室のニオイケア

2)湿気対策

住まいの湿気は、梅雨時などの自然環境だけでなく、人が暮らすだけでも大量に発生する。入浴や調理でも毎日2リットルくらいの水蒸気が発生し、人間が一晩寝るだけでもコップ一杯以上の汗をかく。体を動かす仕事が多い看護スタッフのかく大量の汗や、締め切った部屋での清拭によっても、湿度は上がる。
つまり、多くのスタッフと多くの入所者が居住する介護施設は、カビにとって絶好の繁殖環境にあると言ってよい。
したがって、居室のニオイケアは、部屋の湿度を上げない工夫と湿度を積極的に下げる工夫の両方が必要である。
次のそれぞれの例を挙げる。

(1)湿度を上げない工夫

・洗濯物はできるだけ室外で干す。室内ならエアコンなどで除湿しながら干す。
・清拭や入浴の後は、こまめに換気扇を回す。
・浴室の温かい水滴は水蒸気になりやすいので、入浴後は浴室全体に冷たいシャワーを掛ける。
・観葉植物は水を与えるだけで湿度が高まるので、乾燥に強い植物を選ぶ、など。


(2)積極的に湿度を下げる工夫

・部屋は換気扇を使いながら、窓を15cmほど開ける。

・窓からの排気は、風の流れを感じて空気が入る側の窓は15cmくらい開け、空気が出る側の窓を全開にする。

・窓を開けて換気する時間は、1日のうちで外気の湿度が低い昼から午後3時頃までにする。

・ベッドの下に湿気を吸収する炭や使用後の乾燥剤を置く など。


しかし、寝たきりの高齢者の部屋の換気には、さりげない心配りも大切である。部屋に入った途端に「わー、臭い!」とばかりにガラガラと窓を開けると、高齢者が「自分は臭いのだ」と自己嫌悪に陥ることがある。本人の前で露骨に消臭スプレーを使用するのも同様である。高齢者のプライドを傷つけないこともニオイケアである。


3)掃除と消臭

カビに栄養素を与えないことも必要である。カビが発生しやすいのは浴室や台所、普段敷いたままのじゅうたんやカーペットは、人間の垢やほこり、食品の残りが微生物のエサとなる。そのため、市販の除菌スプレーを使用して、こまめに掃除することが大切である。

生ごみの残る台所やごみ箱は、好酸性の微生物が繁殖しやすいので、アルカリ性の強い重曹を振りかけておくだけで消臭できる。カーペットや畳のニオイは、重曹を溶かした水でぞうきん掛けをすると、汚れだけでなく、染みついたニオイを消臭できる。

施設全体のニオイ対策としては、ニオイ成分を吸収、分解、中和して空気を浄化する脱臭器が開発されている。これらには、オゾン空気清浄機、光触媒空気清浄機、マイナスイオン空気清浄機、活性炭脱臭器などがある。

介護施設におけるニオイケア 3
居室・トイレのニオイケア
臨床老年介護2008年9・10月号

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2010年01月10日

居室・トイレのニオイケア 1

居室のニオイケア

1)居室のニオイの原因

施設の入所者にとって居室は、「身体」「服」に次ぐ第三の皮膚であると言っても過言ではない。したがって、居室のニオイケアはそのまま入所者のニオイケアになると言える。

住環境のニオイは、そこに住む人間の出す排泄物のニオイが居室に付着する場合と、微生物が居室の壁に繁殖してニオイを出す場合とがある。人間の体臭をつくる微生物は主に表皮ブドウ球菌などの常在菌であるが、居室のニオイを強くするものは主にカビである。
したがって、居室のニオイケアで大切なのは、「カビの除菌対策」である。
カビの除菌対策はニオイ対策としてだけではなく、入居者の健康対策としても重要である。むしろ、健康対策としてカビの除菌を行う結果が居室のニオイ対策になると考えるべきであろう。


(1)カビの種類

しかし、ひと口にカビと言っても、その性質や生息場所はさまざまであるので、まず身の回りのカビの特徴を知ることが大切である。

次に代表的なものを挙げる。
クラドスポリウム:風呂やトイレの壁、タイルの目地、エアコンの加湿器の内部で黒く斑点状に繁殖する。強いニオイを発するだけでなく、呼吸器系のアレルギーの原因ともなる。
アスペルギルス:革製品や畳、カーペット、家具などに、白、黄、緑、黒などの色でまだらに繁殖する。居室の身の回りのニオイは、アスペルギルスであることが多い。
アルテルナリア:ホースやシャワーカーテン、風呂場のすのこ、エアコン内部にすす状に黒く発生する。気管支喘息の原因菌ともなるので、注意が必要である。
ペニシリウム:食品類や押し入れ、畳などに青緑色で斑点状に繁殖する。カビ毒を発生するので、居室で食する習慣のある入居者は注意が必要である。


(2)繁殖条件

空気中を浮遊しているカビは、それ自体では繁殖しない。しかし、カビが付着した場所が繁殖条件にあると、急激に増殖してニオイを発生させる。

繁殖条件の第1は、高温多湿、特に湿度である。第2は、ほこり、ちり、垢、食品など、カビの栄養分が存在することである。


介護施設におけるニオイケア 3
居室・トイレのニオイケア
臨床老年介護2008年9・10月号

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2010年01月03日

入所者へのニオイケア 4

口腔ケアにおけるニオイケア

1)食べカスを取り除く
高齢者の口臭の大部分は、口の中の食べカスが原因である。口のニオイは食後の歯磨きやうがいなどの口腔ケアで大半は防げる。

食後の歯磨きは「食べたらすぐ」が原則である。口の中は温度が高いので、食後30分くらいで食べカスが発酵を始める。口臭対策という意味では、歯磨きでなくとも食後に口の中をゆすぐだけでも十分効果的である。その際、消臭作用のあるカテキンを含んだ濃いお茶でうがいをすると、より効果的である。
自分で歯磨きやうがいができない高齢者には、コップの水にお酢、イソジンガーグル、抗菌効果のあるハーブのテートリーを垂らしたものを用意し、そこに口腔ケアのための綿棒を浸してから口の中を拭くと、雑菌の繁殖を抑えることができる。その時、高齢者には目いっぱいの大口ではなく、半分くらい軽く口を開けてもらう方が、食べカスを取り除きやすい。脳梗塞の後遺症で麻痺がある人は、麻痺した側に食べカスがたまりやすいので、麻痺側の歯と頬の間を念入りにケアする。


2)舌苔を除去する
口臭ケアでは、舌のニオイも大切である。舌に付着する舌苔は、強いニオイの原因となる。特に胃腸の弱い高齢者は、舌苔ができやすい。

舌苔は、専用の舌ケア用具もあるが、スプーンの丸い縁でそっとこするだけでも十分除去できる。


3)唾液を分泌させる
生理的口臭の原因は、唾液の減少である。唾液は、最も強力な天然の消臭剤である。

高齢者は、唾液の分泌が減少し口が渇きやすく、しかも、抗コリン作用のある唾液の分泌を抑制する薬を服用していることが多いので、生理的な口臭が強くなりやすい。そのため、唾液を出すための「お口体操」も効果的である。食事の前に「パタカラ」と発音するだけで、唾液の分泌を促進できる。
また、最もよい唾液分泌法は、よくしゃべることである。黙々ではなく、楽しく会話をしながら食事をすることは口臭の予防ともなる。口臭ケアにとって沈黙は「金」ではなく、禁止の「禁」である。


4)口臭から病気を見付ける
口臭ケアで大切なことは、口臭が体の病気のサインにもなることである。特に高齢者が急に口臭が強くなったり、いつものニオイと異なる口臭がした場合には、何か体の中で病気が進行していることを疑うべきである。

例えば、口腔内の病気では、歯周病は最も大きな病的口臭の原因である。体内の病気では、糖尿病では甘酸っぱい口臭となり、肝臓や腎臓の病気ではアンモニア臭、呼吸器系の病気では腐った肉のようなニオイ、胃腸の病気では腐った卵のようなニオイがすることがある。
もちろん、このような病的口臭のケアは、原疾患の治療である。体のニオイは体の中の目撃者であり、体のニオイが健康のバロメーターになることも、介護者は理解するべきであろう。
 

引用・参考文献
1)五味常明,須藤章:イラスト版 介護・ニオイで困っていませんか.講談社,2001.


介護施設におけるニオイケア 2
入所者へのニオイケア
臨床老年介護2008年7・8月号

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2009年12月27日

入所者へのニオイケア 3

排泄ケアにおけるニオイケア

1)アンモニア対策
排泄ケアにおけるニオイケアとは、尿と便の失禁のニオイ対策のことである。
尿失禁のニオイは、介護をする側・される側のどちらにとっても最も頭を悩ますものである。尿失禁で大切なことは、治療や体操で改善するものがあるということである(これは専門書を参照してほしい)。

尿失禁のニオイケアは、ほとんどアンモニア対策と言ってよい。アンモニアは市販の消臭剤や活性炭でも消臭しにくく、しかも高齢者の髪や皮膚、さらには居室の壁などに吸着しやすい厄介なニオイである。
アンモニア対策のポイントは、アンモニアのアルカリ性を中和することである。したがって、陰部を洗う石けんは、弱酸性のものを使用する。清拭の時は、洗面器にためたお湯に酢やクエン酸、木酢液などを少量入れて弱酸性にすると効果的である。アンモニアを分解するハーブのユーカリを少量入れてもよい。
またアンモニアは、尿中の尿素が便の雑菌で分解されると発生するので、便と尿は一緒にしないことが大切である。尿を吸ったおむつに便が付いたままだったり、部屋のポータブルトイレに便と尿が一緒になったりしていると、たちまちアンモニアが発生する。高齢者が排便したことを速やかに気付いて排泄ケアをすることも大切なニオイケアである。
同時に、ニオイをケアした介護用品をうまく利用することも大切である。近年、介護用品の分野では、尿漏れ防止機能を強化したおむつや消臭繊維を素材にしたおむつなど、ニオイ対策を施した機能性用品が日進月歩で開発されている。おむつだけでなく、衣類やシーツなどにも消臭繊維を使用した用品があるので、これらを上手に利用することや高齢者に情報として教えてあげることもニオイケアの一つである。

2)食事を工夫する
便のニオイが臭くなるのは、食べ物がよく消化されずに腸内で腐敗が進からである。

食事の仕方でも便のニオイは強くなる。胃腸機能が低下した高齢者にとって、よく噛み砕かれず、唾液と十分に混合されていない食べ物は、栄養素ではなく腐敗の材料と言ってもよい。食べられるスピード、食べやすいメニュー、楽しんで食べられる環境など、上手な食事ケアはニオイケアともなることを忘れてはならないだろう。
ストレスは便のニオイを強くする要因でもある。ストレスは、胃の消化酵素であるペプシンの分泌を抑制したり、逆に空腹なのに分泌過剰になったり、消化不良の原因となる。胃内での消化不良は、ニオイ分子が逆流して口臭の原因となる。ストレスは、大腸や小腸の蠕動を抑制して、脳内での食べ物の滞在時間を長くし、食べ物の腐敗を進ませる。またストレスは体内で活性酸素を増加させ、皮脂腺の皮脂を酸化して「加齢臭」の原因ともなる。「病は気から」と同じように「ニオイは気から」なのである。
体のニオイのもとは摂取した食べ物である。逆に、食べ物の中には積極的にニオイを除くものもある。
体のニオイは食事に影響されている。便のニオイの原因は、インドール、スカトール、硫化水素、アンモニアなどである。これらはすべてタンパク質が分解されたものである。まずは、動物性のタンパク質が少ない食事をすることが重要である。
同時に、消臭作用のある食事を心掛けることも大切である。便の悪臭の原因は、腸内でウエルシュ菌などの悪玉菌が主にタンパク質を分解し、腐敗が進ことによる。逆に、ビフィズス菌などの善玉菌は主に炭水化物を分解し、ニオイが少ない。したがって、善玉菌を増やして悪玉菌を減らし、腸内環境を整える食品は、「食べる消臭剤」ともなる。それには、食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌の三本柱を含む食材を摂取することが大切である。特に、食物繊維は善玉菌のすみかともなり、悪玉菌やニオイ分子を吸着して体外に排出する。
腸内で産生されたニオイ分子は、血管から体内に吸収され、呼気で息と共に出ると口臭となり、汗と共に出ると体臭となる。便のニオイが軽減するということは、口臭・体臭を軽減するということにつながる。
腸内の常在菌は加齢と共に悪玉菌が増加し、善玉菌が減少する傾向がある。腸内の善玉菌が増え悪玉菌が減るということは、腸内の常在菌のフローラが若返ることでもある。腸内年齢を若く保つアンチエイジングこそ、口臭・体臭予防の秘訣なのである。


介護施設におけるニオイケア 2
入所者へのニオイケア
臨床老年介護2008年7・8月号

posted by 五味クリニック at 00:00| 介護施設のニオイケア